マテリアリティ(重要課題)とは?意味や特定プロセスをわかりやすく解説

企業のサステナビリティ経営を推進する上で、避けては通れないキーワードが「マテリアリティ(重要課題)」です。

しかし、数多くの企業のご支援に携わってきた経験から見ても、その意味を正確に理解しているビジネスパーソンは多くありません。サステナビリティ経営に着手する企業にとって、マテリアリティの特定は最優先事項ですが、「具体的な策定方法が分からない」という課題を抱える担当者は非常に多いのが実情です。

本記事では、マテリアリティの基礎知識から策定プロセス種類の違い、そして専門家が重視する「最も重要なポイント」までを詳説します。

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目次

マテリアリティ(重要課題)とは?

マテリアリティ(重要課題)とは?

企業が優先して取り組むべき「重要課題」のことです。

もともとは会計・監査分野で「財務上の重要性が高い事項」を指す言葉でしたが、近年ではサステナビリティの文脈においても不可欠な概念となりました。

サステナビリティが対象とする範囲は、気候変動や廃棄物といった環境問題から、人権尊重、人的資本、地域貢献、コンプライアンスまで、極めて広範にわたります。企業がこれらすべての課題に対して、限られた経営リソース(ヒト・モノ・カネ)を等しく投じることは現実的ではありません。

そこで、自社の事業特性を鑑み、具体的にどの課題解決に注力するのかを明確にする必要があります。

マテリアリティの特定とは「あれもこれも」と手を広げるのではなく、取り組むべき優先順位を決定し、
同時に「今は取り組まない課題」を明確にする作業に他なりません。

マテリアリティが定まることで、初めて達成すべき目標(KPI)が設定可能となり、サステナビリティ経営の強固な土台が完成します。ここが曖昧なままでは、その後の施策がすべて軸のぶれたものになってしまいます。

マテリアリティの特定方法

世の中には数千項目に及ぶ社会課題が存在すると言われており、その中から自社に最適なものを選び出すのは容易ではありません。

そのため、一般的に以下のプロセスで絞り込みを行います。

① 数千の社会課題(世の中に存在する網羅的な課題)
② 数百の課題(自社の属する業界に関連するものに限定)
③ 5〜10個程度の課題(自社が主体的に対応すべき重要課題)

このように段階的に対象を絞っていくことで、最終的なマテリアリティを決定します。

しかし、自社に知見が不足している場合、「何が重要か」の判断基準を持てず、議論が停滞するケースも少なくありません。そこで重要となるのが、次に解説する「4つの策定ステップ」です。

ステップ①社会課題の抽出

マテリアリティ策定の第一歩は、議論のテーブルに載せるための「社会課題の一覧表」を作成することです。

このフェーズで最も重視すべきは、網羅性です。一度リストから漏れてしまった課題は、その後のプロセスで議論の対象になることはありません。検討漏れを防ぐためにも、多角的な情報源から社会課題を洗い出す必要があります。

具体的には、以下のような公的・客観的な基準を参考にします。

・国際的なガイドライン:GRI、SASB、ISO26000など

・投資家の視点:ESG評価機関による評価基準

・業界固有の視点:自社が属する業界特有の課題や同業他社の動向

これらのソースを横断的に確認し、まずは候補となる課題を漏れなく抽出することが重要です。

なお、ゼロからこの一覧表を作成するには膨大な工数を要します。その際は弊社で用意している「社会課題一覧表」をご活用ください。

こちらをたたき台にして、自社で使いやすいように編集していただければ、課題リストづくりの工数を圧縮できます。

ステップ②社会課題の評価

課題の抽出が完了したら、次はそれぞれの重要度を評価します。

すべての課題に等しく注力することはできないため、優先順位を可視化する必要があります。ここで活用するのが、「マテリアリティマトリックス」というフレームワークです。

・横軸:自社にとっての重要度(ビジネスへの影響度)

・縦軸:ステークホルダーにとっての重要度(社会からの要請・関心)

マテリアリティマトリックス

洗い出した各課題をこの2軸に沿って配置していきます。

重要度の位置決めを行う際、多くの課題が「右上のエリア」に集中してしまうことが多々あります。すべての社会課題が重要である以上、自然な現象ではありますが、これでは優先順位の判断がつきません。

そこで、評価軸を「0〜100」のような絶対評価にしないことがポイントです。そもそもマトリックス上の「0の地点を重要である」と定義した上で、「非常に重要」「極めて重要」といった相対評価で差をつけていきます。

このように課題同士を比較・ランク付けすることで、取捨選択の議論がスムーズになります。実際に、ソフトバンクグループなどの先進企業においても、こうした相対的な視点で評価付けが行われています。

引用:https://group.softbank/sustainability/mission/materiality

ステップ③重要な社会課題を特定

マトリックスマトリックスを経て、いよいよ自社で取り組むべき「重要課題」を決定します。

基本的には、マトリックスの右上、つまり「自社とステークホルダーの両者にとって重要度が高い」エリアに位置するものがマテリアリティの筆頭候補となります。

ただし、ここで注意すべきは、マトリックスの結果だけで機械的に判断しないということです。

サステナビリティ経営は、究極的には「自社独自の戦略」であるべきです。そのため、選定にあたっては以下の視点が不可欠です。

創業の精神やパーパスとの整合性:
たとえステークホルダーからの関心が相対的に低くても、企業のアイデンティティに関わる課題であれば、それは特定すべき重要なマテリアリティになり得ます。

事業との関連性:
社会的な要請が極めて高くても、自社の事業領域からあまりに乖離している場合は、優先順位を再検討する必要があります。

他社の事例を模倣するだけでは、自社らしさが失われ、形骸化した取り組みに陥りかねません。自社の理念やパーパスに立ち返り、「自分たちは何のためにこの課題を解決するのか」という主体的かつ独自の視点で特定することが、サステナビリティ経営を成功させる最大のポイントです。

ステップ④社内外での議論・承認

最終フェーズでは、作成したマテリアリティ案の妥当性を検証し、組織として正式に決定します。

社内メンバーだけで議論を進めると、どうしても自社に都合の良い解釈に偏り、客観的な視点が欠落してしまう懸念があります。そのため、外部の専門家やコンサルティング会社、あるいはNPO・NGOといった第三者からレビューを受けることを推奨します。

外部の視点を取り入れることで、以下のような確認が可能になります。

・視点の抜け漏れはないか
・世の中の潮流や国際的なスタンダードと乖離していないか

こうしたプロセスを経てブラッシュアップした案を、最終的に取締役会などの意思決定機関で承認することで、マテリアリティの特定は完了となります。

専門的なコンサルティングの現場では、企業の思考をより深め、独自の視点を引き出すための高度な分析手法が用いられることもあります。こうした外部知見を戦略的に活用することで、より実効性の高いマテリアリティの策定が可能となります。

マテリアリティの種類(シングル/ダブル/ダイナミック)

マテリアリティを巡る議論において、担当者が直面するのが「シングル」「ダブル」「ダイナミック」といった用語の使い分けです。現在、マテリアリティの定義は世界的に統一されているわけではなく、複数の考え方が並存しています。

適切なアプローチを選択するために、まずは各概念の概要を理解しましょう。

シングルマテリアリティ

環境や社会の変化が「企業(財務)に与える影響」を重視する考え方です。

例えば、「気候変動による災害で自社工場が停止した場合、どの程度の財務損失が出るか」といった視点であり、主に投資家の意思決定に資する情報を重視します。

ダブルマテリアリティ

シングルマテリアリティの視点に、「企業活動が環境や社会に与える影響」を加えた考え方です。

「自社工場の稼働が周辺の経営資源や水質にどう影響するか」といった社会的なインパクトも含めて評価します。現在、欧州を中心に主流となっている考え方です。

ダイナミックマテリアリティ

マテリアリティは固定されたものではなく、「社会情勢の変化に伴い動的に変化する」という考え方です。

その顕著な例が「生成AI」です。数年前までAI倫理を重要課題に掲げる企業は稀でしたが、現在は著作権やガバナンスへの対応がブランド価値や市場競争力に直結するようになり、多くの企業がマテリアリティとして取り込み始めています。

マテリアリティの選び方

「結局、どの考え方を選べばよいのか」という問いに対し、唯一絶対の正解はありませんが、実務上では「ダブルマテリアリティ」を軸に据えることが現実的です。企業と社会、双方の視点から評価を行うため議論のプロセスが明確になりやすく、包括的な戦略を立てやすいというメリットがあります。

一方で、社会課題の変化を捉える「ダイナミックマテリアリティ」の視点も欠かせません。ただし、常に変化を追い続けてしまうと、判断のゴールが見えず、意思決定が遅れるリスクがあります。

ビジネスには期限や予算の制約があるため、サステナビリティ経営においても「まずは決定し、行動に移すこと」が何よりも重要です。

変化の激しい時代に対応するためには、特定したマテリアリティを固定せず、「数年ごとの定期的な見直し」「社会的な重大事象が発生した際の追加検討」のような運用ルールを設けることでダイナミックな視点を補完するのが効果的です。

まずはダブルマテリアリティを軸に現在の重要課題を定義し、運用の仕組みの中で社会の変化を柔軟に取り入れていく。このバランスこそが、実効性のあるサステナビリティ経営の第一歩となります。

【専門家が語る】マテリアリティ特定時の重要ポイント

マテリアリティの特定はゴールではありません。せっかく策定したマテリアリティが「形だけのお題目」にならないよう、実務において特に重視すべきポイントを3つ解説します。

ポイント①収益構造と連動しているか

サステナビリティ経営の本質は、社会課題の解決を通じて企業価値を向上させることにあります。社会貢献という側面だけでなく、取り組みが利益に結びつかなければ継続は困難です。

多くの企業が「サステナビリティは利益を生まない」と悩む要因は、選定した課題と自社の収益構造がリンクしていない点にあります。

全国で給食事業を展開する一冨士フードサービス株式会社(従業員数約17,000人)では、マテリアリティの一つに「フードサービス業界の人手不足解消」を掲げ、成果指標として「人時売上高」を設定しています。

一見すると通常の経営指標に思えますが、給食業界にとって人手不足は、事業継続を脅かすだけでなく、食事提供を通じた社会の健康維持という機能を停滞させかねない重大な社会課題です。

同社はこの課題に対し、省力化・省人化を実現する最新機器の導入オペレーションの刷新を、サステナビリティ戦略の一環として推進しています。

その結果、少ない人数でも現場を回せる体制が構築され、生産性の指標である「人時売上高」の向上を実現しています。

つまり、「労働人口減少への対応」という社会課題への貢献が、そのまま「会社の利益向上」と「事業の持続性」に直結しているのです。

自社のマテリアリティが達成されたとき、同時に企業価値が向上する設計になっているか。

この視点が欠落していると、現場は「本業とは別の負担」として疲弊してしまいます。経営戦略と完全に合致したマテリアリティこそが、真のサステナビリティ経営を支えるのです。

ポイント②マテリアリティの数

担当者から頻繁に寄せられるのが、「マテリアリティはいくつ選べばよいのか」という質問です。他社の事例を見ると、10個、20個と多くの課題を並べているケースが見受けられますが、数に一律の正解はありません。

最も重要なのは、他社に合わせることではなく、「自社のリソース(キャパシティ)に合わせて上限数を決めること」です。

特にリソースが限られる中小企業が、上場企業のような網羅性を求めると、施策が「広く浅く」なり、結果として何の成果も得られないリスクが高まります。そのため、策定前に自社のスタンスを以下の3つから定義することをお勧めします。

・網羅型:ESG領域を幅広くカバーし、10個前後のマテリアリティを設定する。主に社会的な要請が強い上場企業向け。

・フォーカス型:特に注力したいテーマを3つ程度に厳選し、優先領域にリソースを集中させる。

・一点集中型:マテリアリティをあえて1つに絞り込み、その領域で圧倒的な成果を目指す。

「マテリアリティが1つで足りるのか」という懸念を持たれるかもしれませんが、まずは1つの領域でも確実に成果を出すことが重要です。その成功体験が社内に波及し、他の取り組みへの原動力となっていきます。

見栄を張って数を揃えるのではなく、「自社が本当に実行できる数はいくつか」という実効性の観点から特定することが、サステナビリティ経営を成功させる出発点となります。

ポイント③1回では決まらない

最後にお伝えしたいのは、「マテリアリティは一度決めたら終わりではない」ということです。むしろ特定した瞬間がスタートであり、その後の「見直し」こそが実効性を左右します。

見直しが必要な理由は、主に2点あります。

①外部環境の急激な変化

②実践を通じた戦略とのミスマッチ

弊社のご支援先でも、2021年の早い段階でマテリアリティを決定しました。しかし、実践を通じて「より自社にフィットする形がある」という改善点が見えてきたため、2025年にマテリアリティの見直しを実施し、より取り組みやすい形へとアジャストしました。

このような方向転換は、サステナビリティ先進企業においても一般的です。

サステナビリティ推進には、唯一無二の正解があるわけではありません。最初から「100点満点」を目指すのではなく、「まずは現時点での最適解で走り出し、状況に応じて修正する」というスタンスこそが、結果としてサステナビリティ経営を成功に導きます。

変化を恐れず、常にブラッシュアップを続けていくことが肝要です。

まとめ

本記事では、マテリアリティの定義から策定プロセス、そして成功の鍵となる実務的なポイントまでを解説してきました。

マテリアリティは、単なる形式的なお飾りではありません。それは、変化の激しい時代において自社が歩むべき道を示す羅針盤であり、新たな利益を生み出す成長の源泉になり得るものです。

もし、「自社だけで判断するのは不安がある」「自社の事業特性に合致したマテリアリティが分からない」という課題をお持ちであれば、ぜひ弊社への相談も検討してください。

株式会社波濤では、各企業の現状に寄り添い、独自の強みを活かした「収益に直結するサステナビリティ戦略」の策定を支援しています。プロの視点を取り入れることで、社内だけでは見落としがちなリスクやチャンスを明確にし、実効性の高いマテリアリティを共に作り上げることが可能です。

個別のご相談も承っておりますので、相談したい方は下記お問い合わせフォームからのご連絡をお待ちしています。

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