近年、企業経営の文脈でサステナビリティという言葉を聞かない日はありません。その流れの中で、徐々に存在感を高めているのが「サステナビリティ・オフィサー」という資格です。
一方で、実際のところ
・取得する意味はあるのか
・転職やキャリアに本当にプラスになるのか
・年収アップにつながるのか
といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
本記事では、そうした疑問に対し、表面的な説明ではなく実体験を踏まえた視点から、この資格を整理していきます。資格の本当の価値、具体的なメリット、そして「今、自分が取るべき資格なのかどうか」を判断する材料としてお読みください。
なお、筆者自身が実際に試験を受験しており、その過程や試験内容、結果についても触れていきます。受験を検討している方にとって、現実的な判断材料になるはずです。
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サステナビリティ・オフィサーとは何か
サステナビリティ・オフィサーとは、
主催しているのは一般社団法人金融財政事情研究会(通称「金財」)です。金融業界では広く知られており、ファイナンシャルプランナー試験などを実施してきた、歴史と実績のある機関です。

類似資格として「SDGs・ESGベーシック」がありますが、こちらは基礎的な知識習得を目的としています。
一方で、サステナビリティ・オフィサーは、脱炭素の取り組みやサステナブルファイナンスまで射程に含めた、より上位かつ実務寄りの検定です。
企業経営に近い視点が求められる点が特徴といえるでしょう。
試験概要と受験のしやすさ
サステナビリティ・オフィサーの試験はCBT(Computer Based Testing)方式を採用しています。全国のテストセンターで、自分の都合に合わせて日時を予約し、パソコンで受験します。年に一度しかチャンスがない試験ではなく、社会人にとっては非常に柔軟性の高い仕組みです。
試験は4択問題が50問、100点満点中70点以上で合格となります。1問あたり2点の配点で、35問以上正解すれば合格です。制限時間は100分。受験料は税込6,050円です。(2025年11月時点)
公式発表によると、累計受験者数は49,000人を超えています。サステナビリティ関連の民間資格としては、かなり大きな規模だといえるでしょう。
サステナビリティ・オフィサーの注目理由
サステナビリティ・オフィサーが注目されている背景には、サステナビリティの専門知識を持つ人材への需要が急速に高まっていることがあります。
投資家は、企業の売上や利益といった財務情報だけでなく、ESGをはじめとする非財務価値を重視するようになっています。「環境に配慮していない企業には投資しない」という考え方は、すでに一般化しつつあります。
それに伴い、企業の情報開示も厳格化しています。姿勢を示すだけでなく、データとして説明することが求められる時代です。しかし、社内に専門人材が不足していることから、ステークホルダーの要請にに十分応えられていない企業も少なくありません。
対象者と標準的な学習時間
経営企画、IR、広報、CSRといった担当者には特に親和性が高い資格ですが、それだけに限りません。これからサステナビリティ分野でキャリアを築きたい学生や若手社会人にも適しています。
勉強方法はシンプルで、公式問題集を活用するのが最も確実です。問題集は約2,400円で、以下の4章構成となっています。
単に環境配慮を学ぶ内容ではなく、金融や企業活動と結びついた実務視点が重視されている点が、この資格の特徴です。
資格取得による3つのメリット
サステナビリティ・オフィサーの資格を取得することで下記のようなメリットを享受できます。
①キャリアの選択肢が広がる
サステナビリティ分野は独学者が多く、知識の有無を客観的に示すのが難しい領域です。この資格は、体系的な知識を持っていることの「客観的な証明」になります。
社内でも「サステナビリティのことならあの人」というポジションを築きやすくなり、転職市場でも「資格保有者歓迎」という求人が増えています。実際に年収500〜1,200万円クラスの求人で記載されている例もあります。
②短時間で合格できる高いコスパ
数か月単位の学習やスクール通学が不要で、短期集中で合格を目指せる点は大きな魅力です。「資格取得で挫折したくない」という方にとって、非常に取り組みやすい資格といえます。
③更新不要の資格
一度合格すれば更新は不要で、資格は永久に有効です。履歴書に書き続けられる点は、地味ですが重要なメリットです。
さらに2023年10月以降は、環境省認定の「脱炭素アドバイザー」制度と統合され、申請により「脱炭素アドバイザー ベーシック」も取得可能となっています。こちらも更新不要です。
仕事・年収への影響は?
サステナビリティ関連の求人は増加しており、実際に大手転職サイトでは「サステナビリティ」で900件以上の求人が確認できます。(2025年11月時点)
サステナビリティ推進室、脱炭素企画室、ESGマーケター、サステナビリティコンサルタントなど、専門部署としての募集が目立ち、特にメーカー、商社、金融機関で顕著です。
一方で、この資格を取っただけで即座に年収が上がるわけではありません。
実際に求人を覗いてみると、年収800万円〜1,000万円を超えるマネージャークラスの募集が驚くほど豊富です。その理由は明確で、脱炭素やESG対応を急ぐのは、資金力のある大手企業が中心だからです。
つまり、サステナビリティ・オフィサーは「収入を直接生むもの」ではなく、「高収入なキャリアへの扉を開く鍵」と位置づけるのが現実的でしょう。
筆者の勉強方法と試験の様子
ここからは、筆者自身が実際にサステナビリティ・オフィサーを受験して感じた率直な所感を共有します。
筆者は、サステナビリティ経営のコンサルティングに日常的に携わっていることもあり、「基礎知識は十分にあるだろう」と考え、試験勉強を始めたのは受験の数日前でした。一般的には約10時間の学習が目安とされていますが、今回は約3時間の学習で試験に臨みました。
ただし、これは決して推奨できる方法ではありません。
学習は大阪〜東京間の新幹線内で行い、公式テキストを一通り解きながら、間違えた問題に付箋を貼っていくというシンプルな方法です。全体の約3割は誤答しており、特に第3章「サステナビリティと金融」は、実務経験があっても相当難易度が高いと感じました。

試験当日は、直前の1時間を使って付箋を貼った箇所のみを復習し、そのままテストセンターへ向かいました。受付で本人確認を行い、スマートフォンやスマートウォッチなどの電子機器をすべてロッカーに預けた後、指定された席で受験します。会場内はパーティションで区切られ、非常に静かな環境でした。
CBT方式の試験では、簡単な操作説明の後に本試験が始まります。制限時間は100分で50問。1問あたり2分の計算ですが、知識があれば即答できる問題も多く、実際には約45分で全問を解き終えました。
CBT方式の最大の特徴は、試験終了後すぐに結果が表示される点です。「終了」ボタンを押した瞬間に点数が画面に表示されるため、緊張感はありますが、結果を持ち帰って待つ必要がありません。
気になる試験結果
結果としては、無事に合格でした。

合格基準は100点満点中70点以上ですが、得点は70点ちょうど。いわゆるギリギリ合格で、1問でも落としていれば不合格だったことになります。
懸念していた第3章「サステナビリティと金融」の正答率は明らかに低く、体系的に学習していれば難しすぎる試験ではないものの、油断は禁物だと感じました。
受験を考えている方へのアドバイス
筆者は受験前、合格者のブログ記事で「テキストの内容がほぼそのまま出る」という記述を目にし、いわゆる「丸暗記」でも通用するのではないかと考えていました。
しかし、実際に受験してみると、丸暗記だけでは厳しいと感じる場面が多々ありました。
第一に、設問アプローチがテキストと異なる問題が多いです。テキストでは「不適切なものを1つ選ぶ」といった形式が中心でしたが、実際の試験では4つの選択肢が提示され、「適切なものがいくつあるか」を選ばせるような形式が多く見られました。
テキストは「間違い探し」をすればよい形ですが、本番では「正しいものを見つける力」が問われます。暗記した内容を、逆方向から確認されるような感覚があり、そこが難しさの一因になりました。
第二に、テキストの解説ページにあるキーワードの理解が不十分だと、試験が一気に難しくなります。筆者は、テキスト上で正解とされる問題の理由付けを中心にインプットしていました。しかし試験では、残りの選択肢に含まれる各キーワードについて、さらに深掘りするような設問も出てきます。
その結果、試験会場で「このキーワードは何だろう」と感じる場面が少なくなく、正直なところ、当てずっぽうに近い判断をした問題もありました。
まとめ
本試験は、自身の知識量を測るうえで非常に有効なテストだと実感しています。特に、金融業界でサステナビリティ領域に関わっていきたい方にとっては、自身のリテラシーやスキルアップを図る機会として有効だと考えます。
一方で、金融業界ではない方にとっては、専門的な内容があるため、特に事業会社でサステナビリティ担当をしている方にとっては、馴染みの薄いテーマも少なくありません。そのため、この試験に合格したからといって、ただちにサステナビリティの仕事ができるようになるかというと、必ずしもそうではないというのが筆者の見立てです。
今回の受験を通じて改めて確認できたのは、サステナビリティを自社で推進する際には、試験で測れる知識以外にも、求められるスキルが多いという点です。
例えば、経営層や上司を巻き込むための巻き込み力、社外のステークホルダーと協力を仰ぐためのパートナーシップ構築力が挙げられます。また、右も左も分からない状況で取り組みを進めていく場面も多くなるため、叩き台を作り上げるスキルも必要になります。
サステナビリティ・オフィサーで補完できるのは、あくまで知識の一端に過ぎず、磨くべきポイントは他にもあることを、受験を通じて再確認しました。
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