近年、企業の現場で「取引先から EcoVadis の受審を求められた」「Sedex に加入してほしいと言われたが内容が分からない」といった声が急増しています。
サプライヤー選定の基準が、これまでの価格・納期・品質に加え、環境・人権・ガバナンスといったサステナビリティ要素へと広がっているためです。
こうした背景のもと、企業の取り組みを第三者的に評価する仕組みとして注目されているのが「EcoVadis」と「Sedex」です。しかし、実際の内容や回答方法は複雑で、戸惑う企業も少なくありません。
本コラムでは、世界で広く利用されるこの2つの評価プラットフォームについて、特徴や違いをコンパクトに整理します。すでに依頼を受けている企業はもちろん、将来に向けて準備をしたい方にとっても、基礎理解の一助となる内容です。
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EcoVadisやSedexが求められる背景
なぜ今、サステナビリティ評価プラットフォームが注目されているのか、その背景を説明します。
グローバル化が進むいま、サプライチェーンは国境を越えて複雑化し、企業の目が届きにくい領域が急速に広がっています。こうしたビジネス構造が一般化する中で、サプライチェーン上のどこかで人権侵害や環境破壊といったESGリスクが発生する可能性は確実に高まっています。
特に大企業には、取引先のESGリスクを適切に把握し、未然に対応する責任が強く求められています。もし問題が発生した際に「知らなかった」で済ませれば、企業イメージは一気に失墜します。
しかし、取引先を一社ずつ調査するのは現実的ではありません。たとえばトヨタ自動車のサプライヤーは約6万社。個別調査には膨大な時間とコストがかかります。
そこで急速に注目されているのが、EcoVadisやSedexといったサステナビリティ評価プラットフォームです。
サプライヤーが共通フォーマットで環境・人権・労働などの取り組みを提示し、それを複数のバイヤー企業が確認できる仕組みのため、サプライチェーン全体のリスク把握が飛躍的に効率化します。サプライヤー側も、個別の調査票に都度回答する必要が減り、対応負荷を大きく下げられます。
こうした背景から、サステナビリティ評価プラットフォームは、今や取引の前提条件として注目度を高めています。
EcoVadisとは
ここからは、代表的なサステナビリティ評価プラットフォームのひとつである EcoVadis について紹介します。
EcoVadisは2007年にフランスで設立され、2025年4月時点で評価を受けた企業は世界185か国・累計15万社を超えています。サステナビリティ評価の事実上の国際標準として、グローバル企業を中心に活用が広がっています。
EcoVadisでは、「環境」「労働と人権」「倫理」「持続可能な調達」の4分野で企業の取り組みを評価し、0〜100点のスコアで示します。平均スコアは50点前後とされており、これを基準に企業の成熟度を俯瞰できます。
さらにスコアに応じて4つのメダルを付与します。
・プラチナ(上位1%)
・ゴールド(上位5%)
・シルバー(上位15%)
・ブロンズ(上位35%)
2025年度では、リコー、ファナック、ナガセヴィータなどの企業がプラチナ評価を獲得。リコーグループは昨年より5ポイント上昇し、82点を獲得しています。
評価プロセスの流れ
EcoVadisの回答プロセスは次のように進みます。
公式サイトで企業情報を登録することでスタートします。取引先経由で招待を受けている場合は、登録後に自社の進捗や結果が自動的に共有される仕組みです。
企業規模、業種、事業地域に応じてカスタマイズされた約50問の質問票に回答します。回答内容は自己申告にとどまらず、制度や取り組みを裏付ける証拠書類の添付が必須となります。
提出した質問票と資料をもとに、専門アナリストが各項目を評価します。
EcoVadis独自の仕組みとして、企業の公開情報や報道、SNSなどを調査し、申告内容との整合性や潜在リスクを確認するプロセスが組み込まれています。ここで重大な問題が確認されると、スコアに影響が及ぶ場合があります。
評価完了後、プラットフォーム上でスコアカードが公開されます。総合点だけでなく、4分野の点数や改善ポイントも示され、取引先との情報共有にも活用できます。スコアカードの有効期間は12か月で、企業は年1回の更新を行う形になります。
EcoVadisには固定の回答期限がなく、企業は業務状況に合わせて柔軟に対応できる点も特徴です。
利用にかかる費用
EcoVadisの利用には年会費が発生します。企業規模やプランにより異なりますが、たとえば従業員100〜999人の企業がベーシックプランを利用する場合、2025年7月時点で 1,109ユーロ(約20万円弱) が必要となります。
Sedexとは
次に紹介するのが、もう1つの主要プラットフォームである Sedex です。
Sedexは2004年にイギリスで設立され、現在では世界150か国・5万社以上が会員となっています。日本でも花王、アサヒ、キリンなど大手企業が参加しており、国内企業だけでも1,000社超が利用するなど、急速に普及が進んでいます。
Sedexの最大の特徴は、労働環境や人権課題に特化した情報共有プラットフォームである点です。設立当時、イギリスの小売業界では労働環境改善や児童労働の防止が大きな社会課題となっており、こうした背景を受けて、企業の倫理的リスクを可視化する仕組みとして発展してきました。
EcoVadisがESG全体を包括的に評価するのに対し、Sedexはとりわけ「労働」「安全衛生」「倫理」に重点が置かれています。
Sedexの進め方と評価プロセス
Sedexを活用する際の主なステップは次の通りです。
公式サイトから会員登録を行います。Sedexには複数の会員タイプがあり、サプライヤー側・バイヤー側・双方利用など、企業の役割に応じて適切なタイプを選択します。
自社の工場や事業所、関連会社などの情報をプラットフォームに登録します。このデータが後のリスク評価に直接使用されるため、正確な入力が欠かせません。
各拠点単位で、労働環境・安全衛生・倫理・環境などに関するアンケート形式の質問票に回答します。オンラインで対応でき、日本語を含む多言語に対応しています。
リスク評価の結果、特定の拠点が「ハイリスク」と判断された場合、あるいは取引先から要請があった場合には、SMETA(スメタ)監査が行われます。
AQや監査結果はSedex上で取引先企業と共有されます。1回の監査で複数の企業と情報共有できる点は、EcoVadisと同様、大きなメリットです。
さらに、バイヤー企業から改善点に関するフィードバックを受け取ることができ、サプライヤーは自社の課題を把握しながら改善を進めることが可能です。
単なるチェックで終わるのではなく、「課題をともに見つけ、改善していく」という姿勢がSedexの特徴といえます。
EcoVadisとSedexの違い
両者はサプライチェーン管理を目的としながらも、立ち位置が異なります。
EcoVadisは、サプライヤーのサステナビリティ対応を0〜100点でスコア化するツールです。
Sedexは、SAQやSMETA監査を活用して、サプライチェーン全体のリスクを可視化するツールです。
EcoVadisはスコアが高い企業は安心して取引できるといった比較・選定に向きます。
Sedexはどこにリスクがあるかを俯瞰して把握するリスクマネジメントに適しています。
両者は排他的ではなく、補完的に併用することも可能です。Sedexでサプライチェーンの透明性を確保しつつ、EcoVadisで特定企業の対応レベルを詳細に評価するといった運用も現実的です。
中小企業の場合は、取引先からツールを指定され、対応を求められるケースが多いはずです。まずは目の前の要請に一つずつ丁寧に対応してください。
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自社でEcoVadisに回答する際に、何から手を付ければよいかわからないと感じる方もいるでしょう。
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