スコープ1・2・3とは?サプライチェーン排出量の基本と算定・営業活用までわかりやすく解説

カーボンニュートラル対応の第一歩は、温室効果ガス排出量を「どこから、どれだけ」出しているかを正しく把握することです。その共通言語がスコープ1・2・3です。

本記事では、GHGプロトコルに基づく定義と違いをわかりやすく整理し、まず着手すべきスコープ1・2の見える化、サプライチェーン全体を対象とするスコープ3の考え方、さらにホットスポット特定や営業提案への落とし込みまで、実務に直結する手順を解説します。

こちらの内容はYouTubeでもご覧いただけます。

目次

スコープとは?3つのスコープの意味と違い

企業の温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)排出量は、国際基準であるGHGプロトコルに従って「スコープ1・2・3」に区分して算定します。

各社が独自ルールで計測すると比較性・信頼性が損なわれるため、共通の物差しとしてスコープ概念が必要です。

本稿では、3つのスコープの意味と違い、実務でつまずきやすいポイントを整理します。

スコープ1:自社施設・車両などからの「直接排出」

項目内容
定義自社の敷地内や自社保有の設備・車両から直接発生する排出
工場ボイラー、厨房のガスコンロ、社用車の燃料燃焼、製造工程の化学反応で発生するガス等
算定の考え方使用量 × 排出係数
たとえばガソリンは1Lあたり約2.29kg-CO₂e
イメージガソリン100L → 約229kg-CO₂e

業種により化学反応起因の排出も対象になるため、自社プロセスで生じうるGHGの棚卸しが肝心です。

スコープ2:購入した電力・熱に伴う「間接排出」

項目内容
定義外部から購入した電力・熱の使用に伴い、供給元(発電所等)で発生する排出
ポイント電力はクリーンに見えても、発電過程でGHGが発生。
算定はスコープ1と同様に使用量 × 電力会社の排出係数
再エネプラン再生可能エネルギー由来の電力プランを契約している場合、排出係数が0として扱われるケースがあり、スコープ2削減の有力施策になります
注意点電力だけでなく購入した熱(蒸気・温水等)もスコープ2に含まれます

スコープ3:サプライチェーン全体の「その他の間接排出」

項目内容
定義スコープ1・2を除く、サプライチェーン全体で自社の事業活動に関連して他社で発生する排出
特徴範囲が広く、15カテゴリに細分化(例:カテゴリ1「購入した製品・サービス」、カテゴリ11「販売した製品の使用」など)
業種別の着眼点製造業では、調達側のカテゴリ1や、製品使用段階のカテゴリ11が大きな「ホットスポット」になりやすい傾向
実務の進め方まず排出量の大きいホットスポットを特定し、そこから重点的に算定・管理するのが現実的です
全カテゴリを一気に網羅しようとすると運用負荷が肥大化します

まず何から始める?

ファーストステップは、社内でコントロールしやすく、算定も比較的容易なスコープ1・2の見える化です。

・燃料、電力、熱の使用量データを整備
・排出係数を適用して算定
・主要設備、拠点、工程別に原単位(生産量あたり等)で管理し、削減余地を把握

そのうえで、取引先データが不可欠で難易度の高いスコープ3へ展開していくと、全体最適の筋道が見えやすくなります。

スコープ1・2の排出量算定シート(使い方動画付き)を今なら無料でプレゼント!

なぜ取引先を巻き込むのか?サプライチェーン連携の必然

大企業では、スコープ3の比率が非常に大きいケースが多く、調達起因(カテゴリ1)が主要ホットスポットになることが頻繁にあります。

このため、サプライヤーを巻き込んだ削減が不可欠です。

自社がTier2・Tier3であっても、上流からの要請で短期間に対応が必要になることがあります。要請が来てから慌てるのではなく、先手の準備が取引先からの信頼獲得に直結します。

営業での活用法「環境に優しい」だけで終わらせない提案設計

環境配慮型の新商品・新素材を提案する際、顧客のスコープ別課題に直結する効果として伝えると刺さります。

例(BtoB営業トークの骨子)

「御社は2050年カーボンニュートラルを掲げ、スコープ3の比率が高いのが課題ですよね。」
「弊社製品に切り替えるだけで、年間◯◯t-CO₂e削減=御社スコープ3の約◯%に相当します。」


抽象的な「エコ」訴求ではなく、スコープ3の削減寄与として数量化
して提示することで、購買側の意思決定プロセスに乗りやすくなります。

財務価値で背中を押す——インターナル・カーボン・プライシング(ICP)

環境価値だけでは意思決定が動かない場合、ICP(Internal Carbon Pricing:社内炭素価格)を活用し、金額換算で説得力を補強します。
例(試算の枠組み)

・削減量:年間◯◯t-CO₂e
・ICP:1tあたり◯万円(顧客の公表値、未設定なら一般的な1万円/tを仮置きの目安に)
財務インパクト:◯◯t × ◯万円/t = 年間◯億円相当

あわせて初期投資・回収年数(3〜4年等)まで示せば、環境×財務のダブルで納得感を醸成できます。

まとめ

今回の内容を下記表にまとめました。

項目内容
義の理スコープ1=直接、2=電力・熱、3=サプライチェーンのその他間接
着手順スコープ1・2の見える化 → スコープ3はホットスポット特定から段階的に
連携上流・下流の取引先を巻き込む設計が不可欠
営業活用削減量を数値化し、ICPで財務価値まで落とし込んで提案

まずは社内データ整備と排出係数の適用から。そこが固まれば、サプライチェーン全体での削減に向けた実効的なアクションへ進めます。

【無料】スコープ1・2の算定シートをプレゼント

只今、こちらのスコープ1・2の算定シートを無料でプレゼントしております。ダウンロードはこちらから

さらに、今ならお問い合わせいただいた方限定で、【スコープ1・2の算定シート】以外にも下記の特典資料&個別無料相談を無料配布中!

✅ サステナビリティ経営超入門の電子書籍
✅ サステナビリティアクションリスト120選
CO₂排出量の算定・対策シート
【製造業向け】設備別の削減対策252選
✅ 個別無料相談(1時間) など

…など、企業のサステナビリティ経営にすぐ使えるツールを無料プレゼント!

コメント

コメントする

目次