BCP対策(事業継続計画)とは?必要な理由・策定プロセス・企業事例まで解説

近年は、地震や台風などの自然災害に加え、感染症、サイバー攻撃、戦争・地政学、サプライチェーン混乱など、予測しづらいリスクが同時多発的に起きています。

こうした非常時でも事業を止めない、あるいは止まっても素早く立ち上げ直すための計画が「BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)」です。

今回は、BCPの基本、策定状況、実務に落とす6ステップ、確認すべき5要素、そして企業事例までを一気通貫で解説します。

こちらの内容はYouTubeでもご覧いただけます。

目次

BCP(事業継続計画)とは

BCP(事業継続計画)とは

BCPは、自然災害や事故、感染症拡大、システム障害などの非常事態が発生した際に、事業を中断させない/中断しても速やかに復旧するための「方針・体制・手順」を文書化した計画です。

防災に限らず「事業を止めないこと」が本質で、顧客からの信頼維持・企業価値の毀損回避につながります。

なぜ今、BCPが必要なのか

まず、思い浮かぶのは地震・台風などの自然災害でしょう。

しかし、現代の主要リスクはそれだけではありません。新型コロナの流行は働き方や供給体制を一変させ、ウクライナ情勢は資源・調達価格を直撃しました。

さらにサイバー攻撃の深刻化により、大手企業でのシステム障害や個人情報漏えいが相次いでいます。

引用:帝国データバンクHP(https://www.tdb.co.jp/report/economic/7llbf4-_jo/

取引先の廃業、物流混乱、環境破壊など、事業継続を脅かす要因は多岐にわたり、予測困難です。「想定外」を前提に、復旧の優先順位と手順を決めておく必要があります。

BCP策定の現状

調査によれば、BCPの策定状況は下記のようです。

・策定している企業:19.8%
・現在策定中の企業:7.3%
・策定を検討中の企業:22.9%

介護施設でのBCP義務化の影響もあり、特定分野では進展が見られます。

一方で企業規模差は顕著で、大企業は37.1%に対し、中小企業は16.5%。過去9年の推移でも、大企業は+9.6pt、中小企業は+4.2ptと開きが残っています。

引用:帝国データバンクHP 事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2024年)
https://www.tdb.co.jp/report/economic/7llbf4-_jo/

地域別には、高知・静岡・富山の順で「策定移行あり」の割合が高く、震災経験や南海トラフ地震への警戒が背景にあると見られます。

BCP策定の6ステップ

BCPは次の6ステップに分けて進めるとスムーズです。

STEP
基本方針を策定する

目的(例:顧客への供給責任の遂行/従業員の人命確保)を明確化。経営戦略との整合を最初に固めることで、後続の計画がブレません。

STEP
運用体制を決定する

経営層が主導し、会社規模に合った体制を設計。大企業は各部門横断のチーム編成、中小は最小限リソースで伝達の確実性を重視。

STEP
中核事業を設定す

会社の存続に直結する事業を特定し、非常時に復旧を優先する順序と水準を決めます。利益性だけでなく、ビジネス・インパクト分析で多面的に評価すると精度が上がります。

STEP
目標復旧時間(RTO相当)を定める

中核事業の業務フローを分解し、必要資源を洗い出したうえで、「何を・いつまでに・どの水準まで」復旧するかを具体の日数で設定。優先順位が明確になり、混乱を防げます。

※RTO:(Recovery Time Objective)は「目標復旧時間」を意味します。

STEP
具体的な対応策を用意する(事前対応/復旧対応)

・事前対応:多能工化、実践的訓練、耐震設備・保険の見直し、生産拠点や在庫の分散、代替サプライヤ確保 など

・復旧対応:復旧専任チームの設置、被災従業員への生活支援、リモートワーク導入、代替設備・代替システムの切替、配送ルート再設計 など

STEP
文書にまとめ、定期的に見直す

発動基準(どの状態でBCPを起動するか)を明記・周知。計画は一度作って終わりではなく、法令・指針の改定や大規模災害の発生などを契機に定期的にブラッシュアップします。

また、抜け漏れ防止のため、BCPは下記5つの視点を横串で点検することで、対応漏れを抑えられます。

・人的リソース
・設備(ハード・IT)
資金
体制(意思決定・権限委譲)
・情報(連絡網・記録・バックアップ)

この5要素が揃って初めて、非常時に「計画が回る」状態になります。

そして、最優先事項は何より人命の安全確保です。

どれほど精緻な計画でも、人命を守れなければ事業の継続・復旧は成り立ちません。

加えて、分厚い全文書は非常時に読み解けないことがあるため、要点を抜粋した簡易版BCP(現場が即時に使える版)を併せて整備しておくのが有効です。

企業事例から学ぶ

新産住宅株式会社(熊本・建設)

1999年の大型台風を教訓にマニュアルを整備し、2016年熊本地震の「前震」翌朝に、台風版を即座に地震版へ転用した事例です。

建築知識が浅い社員でも対応できる電話対応マニュアルや、被害状況を共通化する被害受付表を準備。

職人不足には、県外企業との相互援助協定で対応し、応援者の宿泊確保、現場裁量を高める権限委譲も実施。結果、3,000件超の問い合わせ・点検依頼に応え、地域からの強い信頼を獲得しました。

太陽産業株式会社(水産加工)

東日本大震災で工場が被災し、主力原料の水揚げ量に業績が左右される構造も重なり、売上は2003年145億円→2017年約77億円まで縮小しました。

民事再生を申請するも、スポンサーが見つからず2018年11月に再生手続き廃止

この事例は、全拠点のリスク洗い出しと事前対策の必要性、そして供給網の脆弱性に対する多層的な備えの重要性を示しています。

まとめ | 今日から踏み出す一歩

BCPは防災計画ではなく経営計画です。

非常時の意思決定・優先順位・復旧手順を事前に定め、訓練と見直しを繰り返すことで、顧客の信頼と企業の持続性を守れます。

今日から始めるために、基本方針→体制→中核事業→RTO→対応策→文書化・見直し、の順で一歩ずつ整備していきましょう。

・まずは基本方針(供給責任/人命確保)を一枚にまとめる。
・中核事業とRTOをざっくりでよいので設定する。
・5つの視点(人・設備・資金・体制・情報)で現状の弱点を3つ書き出す。
・本編(詳細版)とは別に、簡易版BCPをA4数枚で用意する。

完璧を目指して先送りするより、「最初の1枚」を早く仕上げることが最大のリスク低減につながります。

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