セミナーや研修の現場で、サステナビリティ担当者のみなさまから日々たくさんのご質問をいただきます。
本記事では、その中でも相談の多い10のテーマについて、実務に直結する形で丁寧にお答えします。
社内浸透の進め方や経営層の説得など、すぐに使える考え方を具体例とともにご紹介いたします。
本記事の内容はYouTube動画でもご覧いただけます。
Q1:サステナビリティ推進部門は出世コース?
結論としては、働いている企業の本気度に依存します。
サステナビリティを長期戦略の中心に据える企業では、経営企画や事業戦略に近い位置づけで、エース人材が配属されるケースが増えております。こうした環境では、経営と現場をつなぐ経験が積めるため、キャリアの選択肢はむしろ広がります。
一方で、取り組みが本格化していない企業では「とりあえず任せる」配置も見られ、本人のやりがいと評価が結びつきづらい状況もあります。
自社の本気度を見極めるには、採用ページの年収レンジが他部門と比べてどうかを確認するといいでしょう。
市場価値の観点では、サステナビリティ・ESGを対応できる人材は貴重とされています。
Q2:サステナ部門が他部署から嫌われないようにどう立ち回る?
サステナ部門の依頼はデータ収集や業務変更を伴い、他部署の負担となりやすい現実があります。
法規制や外部要請による対応であっても、実際の説明や依頼を行うのはサステナ担当者であるため、まるで「サステナ部署がお願いしている」ように見える状況も生まれます。

そのため、サステナビリティ担当者にはある程度「嫌われ役」を引き受ける覚悟も時には必要です。なぜならば、組織を良い方向に変えていくには、必ず痛みが伴うからです。
「短期的な楽を取るのか、長期的な企業価値を優先するのか」
サステナビリティ担当者は、常にこの問いを社内に投げかける役割を担っています。皆さまの活動を心から応援しています。
Q3:同業の成功事例がないと動かない役員をどう説得する?
「サステナはコストだ」という見方はどの企業にも根強く存在し、役員から「他社の成功例を見せてほしい」と求められることがあります。
しかし結論から言うと、どれだけ丁寧に同業他社の成功事例を提示しても、役員の意識が変わらなかった、というケースが多いのが現実です。
筆者自身も多くの企業研修で事例紹介を行い、「勉強になった」と言われる一方で、その後の企業が実際に変化した例は決して多くありません。つまり、事例を示したからといって、行動につながるとは限らないということです。
それよりも重要なことは、「まず儲かりそうなテーマから始める」というシンプルなアプローチです。自社のビジネスと直結し、かつ利益が生まれる成果が出れば、役員の考えにも影響を与えるでしょう。
小さな成功体験が、一番の説得材料になります。まずは成果が出やすい分野から取り組み、成功実績をつくることが、組織全体のマインドを変える第一歩です。
Q4:サステナ部署の業務範囲と年間スケジュールの型を知りたい
企業規模や業種によって細かい動きは変わりますが、サステナ部署の業務は大きく4つのカテゴリーに分類できます。
①活動推進:KPI(例:CO₂原単位、女性管理職比率など)の進捗管理や課題解決を担う領域です。必要に応じてサステナビリティ委員会を開催し、経営層に報告を行うことも含まれます。
②社内浸透:サステナビリティを日常業務に根付かせるための研修やワークショップの企画・実行が中心です。緊急度は高くないものの、企業全体の変革を進めるうえで最も重要度の高い領域です。
③情報開示:統合報告書、サステナビリティレポート、有価証券報告書などに年間の成果をまとめて社外開示する仕事です。年度の集大成にあたる領域で、開示の直前は繁忙期になりがちです。
④外部評価対応:CDPやEcoVadisなどの評価機関への回答や情報提供を行います。外部からの評価は投資家や取引企業から注目されるため、企業の社会的信用度にもつながる領域です。
こうした業務を年間で並行して行うため、サステナ部署は忙しいポジションと言えますが、企業の未来を形づくる非常にやりがいのある仕事であることは間違いありません。
Q5:サステナ担当者に必要な要件を1つ挙げるとしたら?
必要なスキルは多岐にわたりますが、特に重要だと考えるのは「ホスピタリティ」です。ここでいうホスピタリティは“おもてなし”に限定した意味ではなく、「相手の立場に立ち、心地よい関係性を設計する力」を指します。
サステナの業務は、自部署だけでは完結せず、他部署にデータ提供を依頼したり業務調整を行ったりする場面が多く発生します。その際に、一方的に依頼をするのではなく、「協力してもらえる空気をつくる」コミュニケーションが不可欠です。
例えば、下記のようなケースでは、どちらの方が「その気にさせる」ことができるでしょうか?

このコミュニケーション力は、経営層のように立場が上の関係者を動かす場面でも効果を発揮します。経験や専門知識ももちろん重要ですが、最終的には「この人のためなら協力しよう」と思わせる人間力が、サステナ推進の成果を左右すると言えます。
Q6:非上場・中小企業が優先順位すべきことは?
非上場企業では、人材も予算も十分とは言えず、「どこから手をつけるべきか」という悩みを抱えやすいと思います。この場合、最も重要なのは「やらないことを決める」という考え方です。
むしろ「儲かりやすく、サステナビリティに貢献できる」テーマから始めることが重要です。SDGsに貢献する目標を広く並べるよりも、自社に効くテーマを絞り、選択と集中を行います。
取り組みを選ぶ際に意識したい判断軸は次の3つです。
①「儲かるし、サステナにも貢献する」
②「サステナに貢献するが、儲からない」
③「儲かるが、サステナに貢献しない」
このうち、優先すべきは当然ながら①の領域です。日本企業は②に手を広げがちですが、この領域は成果が見えづらく、社内の理解も得られにくい側面があります。
まずは「利益につながるサステナ」を起点に成果をつくることが、限られたリソースで成果を引き出す最も現実的なアプローチと言えます。
Q7:社内浸透を可視化したいのですが、どのように計測するの?
非常に多くの企業が抱える課題です。しかし、指標の設定を考える前に確認したいのは、「なぜ社内浸透をしたいのか」という目的です。
社内浸透の目的は、単に研修の参加率を向上させたり、理解度テストで高得点を取ることではありません。最終的には、「従業員がサステナビリティを自分ごととして捉え、自発的なアクションを起こし、その結果として企業価値が高まること」です。
とはいえ、新しい行動を起こすには勇気が必要で、「失敗したらどうしよう」「上司が認めてくれるだろうか」と躊躇するケースも多いものです。つまり、従業員のアクション量を増やすためには、チャレンジを後押しする組織文化の醸成が不可欠です。
したがって、測るべき指標は「組織内のサステナビリティに対する雰囲気(カルチャー)が高まっているかどうか」という点になります。
具体的には、従業員向けアンケートの中に以下のような設問を設定し、定期的にスコアを追うことが有効です。
・サステナビリティKPIについてチーム内で議論されている
・直属上司が、業務におけるサステナ取り組みに前向きである
これらの回答傾向を毎年追跡することで、自社の活動が組織文化にどの程度影響を与えているかを可視化できます。
下記にサステナビリティの社内浸透のステップを詳しく解説しておりますので是非ご覧ください。

Q8:社内浸透で生じがちな失敗パターンを教えてください
もっともよくある失敗は、「社内浸透=研修」だと捉えてしまうことです。研修を一度実施すれば社員が理解し、行動も変わるという前提に立ってしまうことが最大の落とし穴です。
浸透を考える際に重要なのは、研修という「点」ではなく、その施策がどのように社内へ広がっていくかという「線や面」の設計です。研修に参加した人だけが知識を持つ状態では意味がなく、実務を通じて体感してもらうことが浸透の核心にあります。
例えば、あるメーカーではまず経営層向けにワークショップを実施し、最後にサステナ推進に対するコミットメントを経営層全員から得ました。さらにそのコミットメントを動画で全社へ展開するため、役員が方針や想いを語る様子を撮影し、工場やオフィスで社員がその様子を目にする仕掛けも取り入れました。
この過程自体が社内浸透の一部として機能し、動画公開時点で社員の期待感が高まる結果となりました。
つまり、研修は入口にすぎず、研修後の波及効果まで設計することが効果最大化の鍵です。
ただいま、こちらの社内浸透のガイドブックを無料でプレゼントしております。ダウンロードはこちらから

Q9:社内の巻き込みを加速する有効施策は?
万能薬はありませんが、効果が高かった事例として「取引先を特集する社内報」をご紹介いたします。
一般的な社内報は、自社の取り組みや社内ニュースを発信するものですが、この企業は取引先の取り組みを取材し、サステナビリティの事例として記事化しています。その記事を自社で共有するだけでなく、相手企業にも「御社の社内報として自由に使ってください」と提供します。
これにより、社外ステークホルダーを巻き込みながら、社内の温度を持続的に高められます。共同プロジェクトが生まれやすくなる点も利点です。まさにSDGs目標17(パートナーシップ)の実践といえます。

Q10:決裁者への期待値調整のポイントは?
「決裁者が短期的な成果を強く求めており、現実的な期待値調整を知りたい」といった相談も受けます。サステナビリティ推進において、予算や決裁を握る経営層をどう説得するかは担当者にとって重要なポイントになります。
まず重要なのは、サステナビリティは「他人事ではなく、自分事」であるという認識を経営層に持ってもらうことです。そのために、世の中の変化を次の3つの視点から整理して示すと効果的です。
①物理的リスク(例:自然災害が収益にどのように影響するのか)
②制度・社会からの要請(例:規制強化によって企業にどのような対応が求められるのか)
③取引先からの圧力(例:取引先の要請に応えないことで発生する自社への影響)
以上の3つを踏まえた上で、「サステナビリティは慈善活動ではなく企業の生き残りに関わる経営戦略である」と明確に伝えることで、短期的な成果だけを見る視点から、中長期的な視点へと意識を変えていくことが今よりも可能になります。
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今回は、サステナビリティ分野でよく寄せられる質問10個に対して解説しました。日々実務に向き合っている皆さまは、決して簡単ではない領域に取り組まれています。しかし、その取り組みは確実に企業と社会を前進させる、非常に価値のある仕事です。
本記事の内容が、明日からの業務の後押しとなり、少しでも前向きなエネルギーにつながれば幸いです。
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