「環境にやさしい」「サステナブル」などの言葉を、商品パッケージや広告、自社のWebサイトで何となく使っていないでしょうか。 環境への配慮を伝えるつもりでも、表現と実態にずれがあれば、消費者や取引先から「グリーンウォッシュではないか」と指摘される可能性があります。
ほな社長本記事では、グリーンウォッシュの意味と代表的な類型、国内外で問題となった事例を整理したうえで、2026年版「環境表示ガイドライン」のポイントと、企業が明日から取り組める5つのアクションを解説します。
グリーンウォッシュへの目は、世界的に厳しくなっています。日本でも2026年3月、環境省が「環境表示ガイドライン」を13年ぶりに改訂しました。商品やサービスに関する表示だけでなく、企業姿勢やイメージ広告まで含め、環境配慮をどのような根拠と表現で伝えるかが改めて問われています。
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グリーンウォッシュとは
グリーンウォッシュとは、環境に配慮しているように見せながら、実態が伴っていなかったり、消費者に誤解を与えたりする環境主張を指す言葉です。「Green(環境)」と「Whitewashing(上辺を取り繕うこと)」を組み合わせた表現です。
企業が明確な虚偽を述べた場合だけがグリーンウォッシュと指摘されるわけではありません。一部分だけを強調して全体の環境負荷を見えにくくする、根拠を示さずに「環境にやさしい」と訴える、達成方法が不明確なままネットゼロ目標を掲げるといった表現も、グリーンウォッシュと受け取られる可能性があります。
欧州委員会が行った調査では、企業の環境主張の53%が「あいまいで、根拠がなく、誤解を招くもの」であり、40%には裏付けとなる根拠がなかったと紹介しています。環境への関心が高まるほど、企業の主張を検証しようとする消費者、投資家、NGO、規制当局の目も厳しくなります。
グリーンウォッシュの6つの類型

英国の金融シンクタンクPlanet Trackerは、グリーンウォッシュを6つの類型に整理しています。自社が意図せず同じような伝え方をしていないか、確認してみましょう。
1. グリーンクラウディング
業界団体や企業グループの中に隠れ、自社としての具体的な行動や責任を曖昧にする手法。「業界全体で取り組んでいる」と説明するだけで、自社の目標、進捗、役割が示されていない場合は注意が必要です。
2. グリーンライティング
自社の環境配慮の一部分だけに光を当て、事業全体で生じている大きな環境負荷から目をそらす手法。たとえば、一部商品の再生素材使用だけを大きく宣伝し、主力商品の原材料調達や製造工程の負荷を説明しないケースが考えられます。
3. グリーンシフティング
企業側の責任を十分に説明せず、環境負荷の責任を消費者の選択や行動へ転嫁する手法。消費者への協力を呼びかけること自体が問題なのではなく、企業自身が何を削減しているのかを示さないまま、消費者だけに行動を求めることが問題になります。
4. グリーンラベリング
明確な根拠がないにもかかわらず、「グリーン」「地球にやさしい」「サステナブル」などの言葉やラベルを使う手法。独自のマークが第三者認証のように見える場合も、消費者の誤認を招く可能性があります。
5. グリーンリンシング
達成期限が来る前に環境目標を繰り返し変更し、未達成の検証を受けにくくする手法。事業環境の変化に応じて目標を見直すことはあり得ますが、変更理由、従来目標の進捗、新しい目標との関係を説明する必要があります。
6. グリーンハッシング
批判や投資家の監視を避けるため、環境への取り組みや実績を意図的に公表しない、または過小に伝える行為。環境情報を過大に見せるのとは反対方向ですが、透明性を損なうという点から、グリーンウォッシュをめぐる問題の一つとして整理されています。
カーボンクレジットの利用も「伝え方」が問われる
近年、特に慎重な説明が求められているのが、カーボンクレジットを利用した環境主張です。
カーボンクレジットそのものがグリーンウォッシュなのではありません。問題になるのは、自社で排出量を十分に把握・削減しないまま、クレジットの購入だけで「カーボンニュートラル」「CO₂ゼロ」といった印象を与えることです。
企業がクレジットを利用する場合は、少なくとも次の点を区別して説明する必要があります。
- 自社の排出量をどの範囲まで算定したか
- 自社の削減努力によって、どれだけ排出量を減らしたか
- どの部分をクレジットで補完したか
- 使用したクレジットの種類、量、対象期間は何か
- 「排出がゼロになった」のか、「残余排出を相殺した」のか
「自社で減らすこと」と「クレジットで補完すること」を混同しないことが、誤解を防ぐ基本です。
海外で問題となったグリーンウォッシュ事例
海外では、NGOから申し立てられたり、当局の調査や制裁の対象になったりするグリーンウォッシュ事例が相次いでいます。
マツダ・ニュージーランド:植林キャンペーンの広告を取り下げ
マツダのニュージーランド法人は、新車1台の販売につき5本の木を植えるキャンペーンを実施し、植林が車両のCO₂排出による環境影響の軽減に貢献すると説明していました。
これに対し、現地のLawyers for Climate Action NZは2026年3月、効果を著しく誇張しているとして、広告基準局へ苦情を申し立てました。同団体と専門家による試算では、ガソリン車「CX-5」が5年間に排出するCO₂を約12.7トンとしたのに対し、5本の木が同期間に吸収する量は約0.0015トンとされました。
ニュージーランドの広告基準局は、その後、マツダが対象広告を削除したため、この案件を「Settled(解決済み)」として公表しています。植林という取り組み自体ではなく、その効果をどの範囲まで説明できるかが問われた事例です。
ルルレモン:「Be Planet」をめぐる申立て
カナダのアパレル企業ルルレモンは、「Be Planet」という環境キャンペーンを展開し、「私たちの製品と行動が、地球を健全な惑星に回復するのに貢献する」と大々的に謳っていました。
一方、環境団体Stand.earthは、「同社のサプライチェーン全体を含む排出量が、キャンペーン開始から2年間で2倍以上に増えている」として、2024年にカナダ競争局とフランス当局へ申立てを行いました。
カナダ競争局は2024年4月に調査を開始したとされています。ただし、この事例は、申立てと調査開始の段階を示すものであり、直ちに当局がグリーンウォッシュを最終認定したことを意味するものではありません。
企業全体を「地球の回復に貢献する存在」と表現する場合、個別商品の説明以上に、事業全体の排出量やサプライチェーンとの整合性が問われることを示す事例です。
SHEIN:フランスとイタリアで計4,100万ユーロの制裁
2025年、ファストファッション大手SHEINをめぐり、フランスでは4,000万ユーロ、イタリアでは100万ユーロの制裁が公表されました。
ここで注意したいのは、フランスの4,000万ユーロが環境表示だけを理由とした罰金ではないことです。フランスの消費者保護当局は、実態と異なる割引表示と、十分な裏付けを示せなかった環境主張の双方を、欺瞞的商慣行として問題視しました。パリ検察官の同意を得た取引手続のもとで4,000万ユーロの罰金が提案され、SHEIN側が受諾しています。なお、この金額のうち、環境主張に対応する部分がいくらなのかは公表されていません。
一方、イタリア競争当局の100万ユーロは、誤解を招く、または説明が不十分な環境メッセージやグリーンクレームを対象としたものです。同当局は、SHEINの一部商品ラインについて、「グリーンな繊維」の環境上の利点やライフサイクル全体への影響が明確でないこと、その商品ラインが全体のごく一部であること、完全にリサイクル可能であるかのような印象を与えたことなどを問題視しました。
この事例から学ぶべきことは、環境主張だけで約70億円の罰金が科されたと単純化することではありません。価格表示、商品説明、環境主張を含む消費者向けコミュニケーション全体が、企業にとって大きな法務・経営リスクになり得るという点です。
EUが進める「グリーン・クレーム指令」
グリーンウォッシュをめぐる問題は、企業への批判や炎上といったモラル上の問題にとどまらず、法規制の対象へと移りつつあります。
その代表的な動きが、EUが主導する「グリーン・クレーム指令」です。これは、科学的な根拠、つまりエビデンスのない環境主張を規制するものです。
EUでビジネスを行う企業は、商品パッケージや広告などで使用している環境表現を見直す必要があります。これは、EU市場に進出している日本企業にとっても無関係ではありません。
また、日本国内だけで商品を販売している企業であっても、グローバルなサプライチェーンに組み込まれている場合は影響を受ける可能性があります。環境に配慮していることを示すだけでなく、その主張を科学的な根拠によって説明できる状態にしておくことが重要です。
日本国内のグリーンウォッシュ事例
日本にはEUのように「グリーンウォッシュ」という名称を冠した包括的な法律があるわけではありません。しかし、環境主張が消費者に誤認を与える場合は、景品表示法などの対象になり得ます。
BB弾の「土にかえる」表示に措置命令
2022年12月、消費者庁はエアガン用BB弾の販売事業者5社に対し、景品表示法に基づく措置命令を行いました。
対象商品では、「土にかえる」「環境中の水と微生物によって二酸化炭素と水に完全に分解される」といった趣旨の表示が行われていました。しかし、消費者庁が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、その表示を裏付ける資料とは認められませんでした。
環境配慮型の素材を使用していたとしても、表示した効果や条件を立証できなければ、優良誤認と判断される可能性があることを示す事例です。
JERAの「CO₂が出ない火」をめぐる申立て
JERAは、燃焼時にCO₂を排出しないアンモニアを火力発電に利用する取り組みを、「CO₂が出ない火」などの表現で紹介しています。
これに対し、気候ネットワークと日本環境法律家連盟は2023年10月、アンモニアの製造・輸送過程などで生じるCO₂や、石炭火力への20%混焼計画との関係が十分に伝わらないとして、日本広告審査機構(JARO)へ広告中止の勧告を求める申立てを行いました。
ただし、JAROは「判断できる範囲を超えている」として、この申立てを審査しませんでした。そのため、JERAの広告が法律違反やグリーンウォッシュであると認定された事例ではありません。
この事例が示しているのは、「燃焼時にはCO₂が出ない」という一工程の説明と、燃料の製造・輸送を含む全体の説明にずれがあると、グリーンウォッシュとの批判を招く可能性があるという点です。
2026年版「環境表示ガイドライン」の5項目

環境省は2026年3月、「環境表示ガイドライン」を13年ぶりに改訂しました。主に、事業者が自ら行う環境表示を対象とし、ISO/JIS Q 14021の要求事項を踏まえて、次の5つを基本項目として整理しています。
1. あいまいな表現や環境主張は行わない
「環境にやさしい」「地球にやさしい」「グリーン」といった言葉だけでは、何がどのように環境へ配慮されているのか分かりません。使用する場合は、対象となる環境側面を具体化する必要があります。たとえば、「環境にやさしい包装」ではなく、「包装材に使用するプラスチック量を、2020年製品比で20%削減」のように説明することが求められます。
2. 環境主張の内容に説明文を付ける
「リサイクル可能」とだけ表示すると、製品全体がリサイクルできるのか、一部分だけなのかが分かりません。「パッケージのプラスチック部分のみリサイクル可能」など、対象範囲や条件が分かる説明を付けることが求められます。
3. 製品のライフサイクル全体を考慮する
ライフサイクルとは、商品が生まれてから役目を終えるまでの一連の流れです。具体的には、原料の調達、製造、流通、使用、廃棄・リサイクルまでを指します。
たとえば、製造時のCO₂を減らしていても、商品を使うときや捨てるときに大きな環境負荷が生じる場合があります。そのため、製造段階だけを見て、商品全体を「環境にやさしい」と表現するのは適切ではありません。
4. 検証に必要なデータと評価方法を提供できるようにする
環境主張は、正確であるだけでなく、検証可能である必要があります。「温室効果ガスを30%削減」と表示するなら、基準年、比較対象、算定範囲、算定方法、使用したデータなどを整理し、求められたときに説明できるようにします。WebページやQRコードなどを活用し、詳細な根拠へアクセスできるようにすることが求められます。
5. 比較主張はLCA評価や数値などで適切に行う
「従来品よりエコ」「他社製品より環境にやさしい」といった比較表現では、比較対象と評価条件を明確にします。
たとえば、「2020年発売の自社従来製品Aと比較し、製造時のCO₂排出量を20%削減」のように、何と何を、どの範囲・方法で比べたのかを示す必要があります。
対象は商品パッケージだけではない
今回の環境表示ガイドラインでは、製品やサービスの取引に直接関係する表示だけでなく、企業姿勢、イメージ広告、ブランド名などに関する環境表示も対象として整理されています。
つまり、商品パッケージだけを確認すればよいわけではありません。企業サイト、広告、パンフレット、営業資料、SNS、IR資料などで、自社やブランドを「サステナブル」「グリーン」と表現している場合も、どの環境側面を根拠にしているのかを確認する必要があります。採用サイトで環境配慮を企業イメージとして訴求している場合も、自主点検の対象に含めるとよいでしょう。
ただし、環境表示ガイドラインの改訂によって、これらすべてに一律の新たな罰則が設けられたという意味ではありません。ガイドラインは、望ましい環境情報提供とISO/JISへの準拠を示す実務上の基準です。実際の法的評価では、景品表示法をはじめとする関係法令、個別の表示内容、媒体、取引との関係などを確認する必要があります。
また、環境省のQ&Aも、ガイドラインに準拠すればグリーンウォッシュの指摘を完全に防げると保証しているわけではないと説明しています。海外規制や社会的な期待水準は変化するため、表示後も継続して妥当性を確認することが大切です。
企業が明日から取り組める5つのアクション

グリーンウォッシュ対策は、言い回しを少し修正するだけでは不十分です。環境情報を、経営・サステナビリティ・法務・広報・マーケティングなどが連携して管理する仕組みが必要です。
その上で、グリーンウォッシュ対策として明日から取り組める5つのアクションをご紹介します。
アクション① 環境主張を行っている媒体を棚卸しする
まず、自社が外部へ発信している環境主張を洗い出します。
対象は、商品パッケージ、Webサイト、広告、パンフレット、営業資料、SNS、IR資料、採用サイトなどです。現在使用している媒体だけでなく、検索や資料請求によって今も閲覧・配布される過去のコンテンツも確認します。
棚卸表には、表示文言、掲載場所、担当部署、対象製品、公開日、根拠資料の所在、最終確認日を記録すると、その後の点検が進めやすくなります。
アクション② あいまいな言葉を具体化する
「環境にやさしい」「エコ」「サステナブル」といった言葉を見つけたら、何が、何と比べて、どの範囲で良いのかを説明できるか確認します。説明できない場合は、言葉を削除するか、根拠に合わせて表現を限定します。担当者によって解釈が変わらない文章にすることが重要です。
アクション③ 主張とエビデンスをセットで管理する
「CO₂を30%削減」と表示する場合は、数値だけでなく、比較対象、算定条件、対象範囲、基準年、算定方法をセットにします。広告文と根拠資料を別々に保管すると、更新時に整合しなくなる可能性があります。一つの主張に対し、参照するデータや承認記録を紐づけて管理しましょう。
アクション④ ライフサイクル全体で確認する
環境配慮の一部分だけを切り取っていないか、原料調達から廃棄・リサイクルまでの流れで確認します。必ずしもすべての環境影響を一つの表示に盛り込む必要はありません。ただし、主張の対象範囲を明確にし、製品全体に効果があるような誤解を与えないことが重要です。
アクション⑤ 根拠資料を保管する
外部から質問や検証があったとき、すぐに説明できる状態を作ります。根拠データ、算定資料、第三者認証、比較対象、使用期限、社内承認者を保管し、表示を変更したときには根拠資料も更新します。担当者の異動や組織変更があっても追跡できる仕組みにしておきましょう。
グリーンウォッシュ対策は企業価値を守る経営課題
グリーンウォッシュ対策は、広報担当者だけが表現を直す作業ではありません。企業が発信する環境情報を、経営として説明できる状態にする取り組みです。
根拠をそろえ、対象範囲を明確にし、できていることと今後の課題を誠実に伝える企業は、消費者、取引先、投資家、求職者からの信頼を得やすくなります。反対に、実態以上の主張は、ブランドの毀損、取引への影響、広告の取り下げ、行政処分などのリスクにつながります。
環境への取り組みを伝えること自体を恐れる必要はありません。大切なのは、「良く見せる」ことを先に考えるのではなく、「何を、どの根拠で、どの範囲まで言えるのか」を整理することです。
まずは、自社のWebサイトや営業資料にある「環境にやさしい」「サステナブル」という言葉を一つ選び、その根拠をすぐに提示できるか確認してみてください。それが、グリーンウォッシュを防ぐ最初の一歩になります。
もし、自社の発信のどこから確認すればよいか分からない場合や、根拠と表現の整理に不安がある場合は、株式会社波濤へご相談ください。商品やサービス、現在の情報発信を踏まえ、誤解を招かずに環境価値を伝える方法を一緒に整理します。
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参照情報
- 環境省「環境表示ガイドライン」令和8年3月版
- 環境省「環境表示について」
- 環境省「環境ラベル等データベース Q&A」
- WWFジャパン「グリーンウォッシュにご用心」
- Planet Tracker「The Greenwashing Hydra」概要
- EU Directive (EU) 2024/825
- European Parliament「Green Claims」審議状況
- フランスDGCCRF:SHEINへの4,000万ユーロ制裁
- イタリア競争当局:SHEINへの100万ユーロ制裁
- ニュージーランド広告基準局:Mazda Motors of NZL 26/045
- カナダ競争局掲載資料:ルルレモンの申立てと調査開始に関する記載
- 消費者庁:エアガン用BB弾の販売事業者5社への措置命令
- 気候ネットワーク:JERA広告に関するJAROへの申立て
- 気候ネットワーク・日本環境法律家連盟:JAROからの回答について
- JARO「JAROってなんじゃろ?」
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