「サステナビリティを社内に浸透させたいのに、経営層の温度感が上がらない」
こうした悩みを抱えるサステナビリティ担当者は少なくありません。
サステナビリティを経営戦略として推進する以上、経営層の関与は欠かせません。社員がどれだけ主体的に取り組んでも、経営層が本気で向き合う姿勢を示さなければ、組織全体の行動や意思決定は変わらず、取り組みは思うように前へ進みません。
ほな社長こうした背景から近年では、経営層だけを対象としたサステナビリティ研修への関心が高まっています。一方で、「一般社員向け研修と何が違うのか」「どのような内容にすれば経営層の行動変容につながるのか」と悩む担当者も少なくありません。
本記事では、経営層向けサステナビリティ研修を設計する際に押さえておきたい3つのポイントと、経営層研修を社内の行動や意思決定につなげるための工夫について解説します。
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なぜ経営層のコミットメントが必要なのか
経営層には、会社の方向性を定め、必要な人材や経営資源を配分し、戦略を実行へと移す役割があります。
そしてサステナビリティ経営では、これらに加えて、もう一つ重要な役割が求められます。それは、「なぜ自社がサステナビリティに取り組むのか」という考えを持ち、組織全体へ浸透させることです。
サステナビリティには、短期的な利益だけでは判断しにくいテーマが数多くあります。廃棄物削減、人権への配慮、働き方の改善、情報開示への対応などは、将来的な企業価値の向上につながる一方で、現場から見ると手間やコストが先に見えやすい取り組みでもあります。
このような状況で経営層から明確なメッセージが示されなければ、社員は「会社として本当に進めてよいのか」を判断できません。担当者が熱心に呼びかけても、一部門だけの活動として受け止められてしまう可能性があります。
一方で、経営層がサステナビリティと自社の事業や理念とのつながりを示し、取り組む理由を自らの言葉で語れば、社員は提案や行動を起こしやすくなります。さらに、その考え方が投資や商品開発、人事などの経営判断にも反映されれば、「サステナビリティは会社の方針である」という認識が組織全体に浸透し、社員の提案や行動も生まれやすくなります。
つまり、経営層に求められるのは、単に「サステナビリティを理解している」と表明することではありません。自社が取り組む意味を言語化し、その考えを経営判断と社内への発信を通じて一貫して示し続けることです。
それこそが、サステナビリティを一部門の活動ではなく、会社全体の取り組みへと発展させる原動力となります。
経営層向けサステナビリティ研修の設計ポイント

経営層のコミットメントを引き出すために、参加者を経営層に限定したサステナビリティ研修を企画する企業が増えています。ただし、知識を網羅的に伝えることだけを目的にすると、研修がかえって取り組みの推進を妨げる可能性があります。
重要なのは、まず経営層に不足しているものを見極め、その課題に合わせて研修を設計することです。
その際の視点となるのが、次の3つです。
これらをすべて盛り込めばよいというわけではありません。すでに理解・共有できていることと、不足していることを整理したうえで、自社の課題に合わせて研修内容や時間配分を設計することが重要です
1. サステナビリティに関する基礎知識
1つ目は、サステナビリティ経営を考えるための基礎知識です。
ここでいう基礎知識は、SDGsやESGといった用語の意味を覚えることだけではありません。少なくとも、次の内容を経営層で共有する必要があります。
- なぜ企業にサステナビリティへの対応が求められているのか
- 自社に関係するテーマには何があるのか
- サステナビリティ経営をどのような流れで進めるのか
- 自社はどの程度の取り組み水準を目指すのか
こうした認識が揃っていないと、経営層の中でも「サステナビリティ」という言葉からイメージする内容が異なります。ある役員は環境問題を、別の役員は社会貢献活動を思い浮かべているかもしれません。
前提が共有されていなければ、個別施策の優先順位を議論しても話がかみ合わず、意思決定にも時間がかかります。まずはサステナビリティ経営の全体像を共有し、自社が目指す方向性について認識を揃えることが重要です。
そのうえで、自社がどのような取り組み水準を目指すのかも明確にする必要があります。取引先から求められる水準を着実に満たすことを重視するのか、それとも自社の強みと社会課題を結び付け、新たな価値を創出することを目指すのか。
こうした方向性が曖昧なままでは、施策ごとの判断基準が定まらず、取り組みが場当たり的になってしまいます。
2. 外圧と事業への影響の理解
2つ目は、自社を取り巻く外部環境の変化と、それが事業にどのような影響を与えるのかを理解することです。
経営層がサステナビリティを「社会貢献」や「余力で行う活動」と捉えている場合、事業とのつながりが十分に見えていない可能性があります。その状態では、一般的な必要性を説明しても、経営課題としての優先順位は上がりません。
そこで研修では、自社を取り巻くステークホルダーの変化を整理し、「この変化が自社の事業にどのような影響を与えるのか」という視点で考える機会を設けましょう。
重要なのは、外部環境の変化を並べて危機感をあおることではありません。「この変化が、自社の売上、取引、調達、人材、ブランド、将来の事業機会にどう関係するのか」までつなげて考えることです。
一方で、明確な規制や取引先から要請がまだ強くない企業もあります。その場合、無理にストーリーをつくる必要はありません。
その場合は、自社のMVVや経営理念に立ち返り、「自社の事業は、どの社会課題の解決に貢献しているのか」「サステナビリティの視点を持つことで、仕事の意味をどのように語り直せるのか」を考えましょう。
外から求められるから取り組むだけでなく、自社が大切にしてきた価値と結びつけることで、経営層自身の言葉が生まれやすくなります。
3. 経営層同士の風通しと対話
3つ目は、経営層同士が率直に考えを共有し、対話できる環境をつくることです。
基礎知識もあり、外部環境の変化も理解している。それでも取り組みが前に進まない場合、原因は知識不足ではなく、経営層同士で十分な対話ができていないことにあるかもしれません。
経営層は、それぞれ異なる部門や事業を担当しています。営業、製造、人事、財務、調達など、立場が違えば、サステナビリティに対する関心や懸念も異なります。
日々の経営会議では、業績や案件、目の前の意思決定が優先されます。意外にも「なぜ自社は取り組むのか」「何を大切にするのか」といった、すぐに正解が出ない問いについて、時間を取って話す機会は多くありません。
だからこそ、経営層向け研修では、一方向の講義だけで終わらせず、対話型のワークショップを取り入れることが有効な場合があります。
たとえば、次のような問いを経営層同士で話し合います。
・自社がサステナビリティに取り組む最大の理由は何か
・取り組まない場合、将来どのようなリスクがあるか
・自社の強みを使って解決できる社会課題は何か
・顧客、社員、地域社会にどのような会社だと認識されたいか
・どの水準まで取り組むことに経営として合意するか
こうした対話を通じて、一人ひとりが持つ考えや価値観の違いが明らかになります。その違いを共有し、議論を重ねることで、会社としての共通認識や意思決定の軸が形づくられていきます。
経営層向け研修で重要なのは、「正解」を教えることではありません。対話を促し、それぞれの考えを引き出しながら、会社としての共通認識を築く場をつくることです。
3つの視点から最適な研修を組み立てる

経営層向け研修では、最初から決まったプログラムを当てはめるのではなく、前章で紹介した3つの視点をもとに、「何が不足しているのか」を整理すると、研修の方向性が見えやすくなります。
| 不足している要素 | よくある状態 | 研修の方向性 |
|---|---|---|
| 基礎知識 | 用語や推進の全体像が共有されておらず、役員ごとの認識が異なる | 共通認識を醸成し、自社が目指す取り組み水準などについて合意する |
| 外圧・事業への影響 | 社会貢献活動として捉えられ、経営課題との接点が弱い | ステークホルダーの変化と、事業上のリスクと機会を整理する |
| 風通し・対話 | 知識と危機感はあるが、部門や役員ごとに考えが分かれ、方針が決まらない | 対話型ワークショップを多く取り入れ、経営層の考えを共有する |
経営層研修の内容を検討する際は、「どの場面で意思決定が止まるのか」「部門間でどのような意見の違いがあるのか」「社員へどのようなメッセージが出ているのか」といった社内の実情を把握することが重要です。現状を整理することで、研修で優先的に扱うべき課題が明確になります。
経営層研修のゴール設定
経営層向け研修で陥りやすいのが、「理解できた」という受講後アンケートの結果に満足してしまうことです。
しかし、理解したことと、組織を動かせることは別です。
重要なのは、研修で得た気づきや考えを、経営層自身の言葉に変え、社内へ発信するところまで設計することです。そうすることで、「なぜ自社が取り組むのか」という考えが組織全体に共有され、その後の推進や社員の行動にもつながりやすくなるからです。
研修後のアウトプットには、次のようなものが考えられます。
大切なのは、研修が終わってから何を発信するかを考えるのではなく、研修を設計する段階でアウトプットまで決めておくことです。
例えば、「研修の最後に、自社が取り組む理由を自分の言葉で整理します」「研修後は、その内容を社員向けメッセージとして発信します」と事前に伝えておけば、参加者の姿勢は大きく変わります。単に講義を聞くのではなく、「自分は何を語るのか」を考えながら参加するようになるからです。
アウトプットを前提に研修を設計すると、対話の質も変わります。抽象的な感想で終わるのではなく、「会社として何を約束するのか」「社員に何を期待するのか」「経営層自身は何を変えるのか」といった、実際の経営や組織運営につながる議論へと発展しやすくなります。
経営層向け研修を設計する5つのステップ
ここまで紹介した考え方を、実際の研修設計の流れに落とし込むと、次の5つのステップになります。
ステップ1:研修後に実現したい状態を決める
「研修を実施すること」ではなく、研修後に経営層や組織がどうなっていてほしいかを定めます。
例えば、「基礎知識を共通認識として持っている」「自社が取り組む理由を自分の言葉で説明できる」「重点テーマに合意している」「社員へ一貫したメッセージを発信できる」など、具体的な状態を設定します。
ステップ2:現状を診断する
次に、基礎知識、外部環境の変化と事業への影響、経営層同士の対話という3つの視点から、自社の現状を整理します。
推進担当者へのヒアリングや経営層への事前アンケート、既存の方針や社内発信の内容などを確認し、どこに課題があるのかを見極めます。
ステップ3:プログラムを設計する
現状にあわせて、不足している要素へ重点的に時間を配分します。
例えば、基礎知識が不足している場合は全体像の共有を、外部環境への理解が不足している場合はステークホルダーの変化や競合比較を、対話が不足している場合はワークショップを中心に構成します。
すべてを均等に扱うのではなく、自社の課題に合わせて設計することが重要です。
ステップ4:経営層自身の言葉を引き出す
講師が説明して終わるのではなく、「自社にとって何を意味するか」を参加者が話す時間を設けます。
個人で考える、少人数で話す、全体で共有するという順番にすると、発言しやすくなります。意見の違いを消すのではなく、違いが生まれる背景を確認しながら共通認識をつくります。
ステップ5:発信と経営実務へつなげる
最後に、研修で生まれた言葉を、社内メッセージ、動画、方針説明などへ変換します。
誰が、いつ、どの場で発信するのかまで決めておくことが大切です。研修直後の一度きりの発信で終わらせず、その後の経営会議や社内対話、各部門の意思決定へ継続的につなげます。
経営層研修の企画前に確認したいチェック項目
経営層向けサステナビリティ研修を企画するときは、次の項目を確認してみてください。
・研修後に実現したい状態を、具体的な言葉で説明できるか
・経営層の基礎知識は、どの程度そろっているか
・経営層は、外部環境の変化と自社事業への影響を理解しているか
・経営層同士が、答えのない問いについて話す機会があるか
・役員ごとの考えや前提の違いが見えているか
・自社が目指す取り組み水準について合意できているか
・自社の経営理念やMVVとサステナビリティが結びついているか
・研修後に作る発信物やメッセージを決めているか
・誰が、いつ、どの場で社員へ発信するかを決めているか
・研修後の意思決定や各部門の行動へ接続する仕組みがあるか
上記一覧の中から対応できていない項目が多い部分こそ、研修で重点的に扱うべきテーマです。
まとめ
経営層向けサステナビリティ研修の目的は、知識を増やすことだけではありません。経営層自身が「なぜ自社はサステナビリティに取り組むのか」という考えを持ち、自分の言葉で社内へ伝え、意思決定と行動につなげられる状態をつくることが重要です。
そのために押さえたい3つの要素についてお伝えしました。
経営層の本気は、「サステナビリティは重要だ」と言うだけでは伝わりません。なぜ取り組むのかを自分の言葉で語り、その考えを経営判断へ反映して初めて、社員は安心して行動を起こせます。
一方で、経営層に何が不足しているのかを見極め、自社の事業や課題に合った研修を設計することは、決して簡単ではありません。「どのような内容を扱うべきかわからない」「研修を実施しても、その後の行動につながらない」と悩む企業も少なくありません。
株式会社波濤では、企業ごとの状況に合わせた経営層向けサステナビリティ研修や、社内浸透の仕組みづくりを支援しています。
「経営層の理解を深めたいが、何を伝えればよいかわからない」「研修を実施しても、その後の行動につながらない」とお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
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