カーボンニュートラルとは?脱炭素との違いや企業の取組方法をわかりやすく解説

テレビCMや企業のプレスリリースにおいて、「カーボンニュートラル」という言葉を目にする機会が増えています。一方で、その意味や自社への影響を正確に理解できていない方がいるかもしれません。

本記事では、サステナビリティコンサルタントとして多くの企業を支援してきた知見をもとに、以下の4つの観点からカーボンニュートラルを整理します。

①カーボンニュートラルの基本知識
②脱炭素との違い
③日本における現状
④企業に求められる具体的な取り組み

自社の取り組みを検討・推進するうえでの基礎知識として、ぜひご活用ください。

なお、本記事の内容はYouTube動画でも解説しています。

目次

カーボンニュートラルとは?基本知識を解説

カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、全体として実質ゼロの状態を実現することを指します。

引用:https://www.asahi.com/sdgs/article/15222328

この定義を理解するうえで、押さえておくべきポイントは大きく2つあります。

ポイント①「実質ゼロ」という考え方

カーボンニュートラルは、「排出量そのものをゼロにする」ことを意味するものではありません。現実的に、企業活動や日常生活を営む限り、温室効果ガスの排出を完全にゼロにすることは困難です。

そのため、まずは可能な限り排出量を削減したうえで、どうしても残る排出については、森林による吸収やCO₂除去技術などを活用して相殺し、「差し引きでゼロ」を目指します。この考え方は「ネット・ゼロ(Net Zero)」とも呼ばれ、実務や国際的な議論においても一般的に用いられています。

ポイント②対象は温室効果ガス「全体」

カーボンニュートラルの対象は、CO₂だけではありません。メタン、一酸化二窒素、フロン類など、さまざまな温室効果ガスが含まれます。

例えば、メタンはCO₂と比較して高い温室効果を持つとされており、特に畜産業などでは重要な管理対象となります。

「カーボン」という言葉からCO₂を想起しがちですが、実際には温室効果ガス全体を対象とした包括的な取り組みである点を理解することが重要です。

カーボンニュートラルと脱炭素の違い

カーボンニュートラルと混同されやすい言葉に「脱炭素」があります。気候変動の文脈ではほぼ同義として使われることも多いですが、実は明確な違いがあります。

改めて整理すると、カーボンニュートラルは「温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、実質ゼロにすること」です。一方で脱炭素とは、「二酸化炭素の排出量を減らし、最終的にゼロを目指すこと」を意味します。

極端に言えば、排出量が今より減らなくても、吸収量を大幅に増やして相殺できれば、カーボンニュートラルは実現できます。脱炭素はあくまで「排出量の削減」を追い求めるのに対し、カーボンニュートラルは「排出と吸収のバランス」を重視する点が異なります。

企業の情報発信ではどちらを使うべきか?

「自社の取り組みを発信する際にどちらの言葉を使うべきか?」という疑問を持つ担当者も多いでしょう。これには正解はなく、自社がステークホルダーに伝えたいメッセージに応じて使い分けることをおすすめします。

具体的には、以下のように整理できます。

再生可能エネルギーの導入など、CO₂排出量の削減そのものを強調したい場合
 →「脱炭素」の使用が適しています

事業活動全体を通じて排出と吸収のバランスを図り、実質ゼロを目指す姿勢を示したい場合
 →「カーボンニュートラル」の使用が適しています

どちらの言葉を使うにしても、大切なのは「言葉の意味を正しく理解した上で、自社の実態と乖離しない形で発信すること」です。実態が伴わない宣言は、近年問題になっている「グリーンウォッシュ」として批判を招くリスクがあります。

カーボンニュートラル実現に向けた日本の現状

日本におけるカーボンニュートラルへの取り組みは、企業活動にも直結する重要なテーマですので、その現状を正確に把握しておきましょう。

日本の排出量「世界第5位」

日本は、世界で5番目に多く温室効果ガスを排出している国です。中国、アメリカ、インド、ロシアに次ぐポジションにあります。

「大国と比べれば日本は少ない」と感じる方もいるかもしれませんが、世界的に見ても日本の排出量は無視できない規模であり、国際社会から責任ある行動が求められています。

政府目標と達成の課題

日本政府は2020年に「2050年までにカーボンニュートラルを達成する」と宣言し、さらに「2030年度までに2013年度比で温室効果ガスを46%削減する」という中間目標を掲げています。

排出量については削減が進んでいるものの、課題も顕在化しています。本来増えるべき森林などによる吸収量が、年々減少し続けているのです。

これは高度経済成長期に植えられた人工林が成熟期を迎え、吸収効率が低下しているためです。このままでは吸収量のさらなる減少が予測されており、新たな吸収源対策が急務となっています。

こうした状況において、政府が目標を達成するためには企業の協力が不可欠です。日本国内から排出されるCO₂のうち、家庭が占める割合はわずか約15%に過ぎません。残りの85%は事業活動のプロセスから排出されています。企業のアクションなしには、カーボンニュートラルの実現が難しいことは明白です。

企業に期待される3つの取り組み

では、企業は具体的に何から着手すればよいのでしょうか。取り組みは以下の3点に集約されます。

取り組み①排出量を把握する

カーボンニュートラルへの取り組みは、人間のダイエットと同じく「現状の見える化」から始まります。まずは自社の事業活動における温室効果ガス排出量を正確に算定することが、すべての出発点です。

上場企業などは排出量の報告義務があるため、毎年算定しているケースが多いですが、中小企業ではまだ対応が遅れています。とはいえ、近年は排出量の算定を簡単に行えるSaaS系のクラウドサービスも多数登場しています。「排出量の算定は難しい」と思い込まずに、まずは利用できるツールを検索することから始めてみてください。

まずは費用をかけずに算定したい方は、弊社で用意している「スコープ1・2 排出量算定シート」をご活用ください。

取り組み②排出量を減らす

現状把握ができたら、次は削減です。

自社の排出量を減らすためには「燃料および電気の見直し」の2つの側面からアプローチすることをおすすめします。この2つは自社の裁量で見直せるため、取り組みやすい領域です。

CO₂排出量は「エネルギー使用量×CO₂排出係数」で算定されます。CO₂排出係数とは、特定のエネルギーを作り出す際にどれだけのCO₂が排出されたかを示す数値です。

省エネ対策を進めればエネルギー使用量が減り、電力プランを再生可能エネルギーに切り替えればCO₂排出係数がゼロになります。どちらも「自社の裁量で意思決定できる」という点で、最初の一手として非常に有効です。

取り組み③サプライチェーン全体の排出量を削減する

自社だけでなく、ステークホルダーを巻き込んだ取り組みも企業に期待されています。近年はサプライチェーン全体での温室効果ガス削減(=スコープ3)が、投資家や大手企業から強く求められるようになっています。

例えば、自社商品の輸送手段をトラックから鉄道や船舶などに転換することで、物流工程のCO₂を削減できます。また、製品の設計段階から環境負荷を軽減する工夫を取り入れることで、顧客が製品を使用・廃棄する際のCO₂排出量も減らすことができます。

「自社の敷地の外は関係ない」という考え方は、もはや通用しない時代です。サプライチェーン全体を見渡した排出削減策を検討しましょう。

まとめ & お役立ち資料

本記事では、カーボンニュートラルの基本から、脱炭素との違い、日本の現状、そして企業に期待される取り組みについて解説しました。

カーボンニュートラルに関する議論の中で、「自社は中小企業であり、大企業と比べて排出量が少ないため、取り組む必要性を感じにくい」といった声も聞かれます。しかし、この認識は見直す必要があります。

カーボンニュートラルは地球規模の共通課題であると同時に、近年ではサプライチェーン全体での対応が求められるなど、企業間取引における重要な要素の一つとなりつつあります。

企業規模にかかわらず、すべての企業が当事者として取り組むことが求められる時代に入っています。

一方で、「自社に適した進め方が分からない」「まず何から着手すべきか判断できない」といった課題をお持ちの企業も少なくありません。

そのような場合には、弊社が提供する各種資料をご活用ください。「【中小企業向け】スコープ1・2排出量算定シート」「【製造業向け】設備別の削減対策252選」など、実務に直結する資料を取り揃えています。

また、カーボンニュートラル推進体制の構築や削減計画の策定などについても、専門的な視点からご支援が可能です。具体的な進め方についてご検討の際は、お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。

また、現在サステナビリティ経営に関する「お役立ち資料」の配布に加え、「60分の無料個別相談会」も実施しております。現状の課題整理や今後の方針策定のヒントとして、ぜひご活用ください。

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